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(掲載日 2006.06.30)
小児救急における対立軸:
医師対患者の問題ではなく、労使問題である
北海道在住 江原 朗
小児救急の問題が政治・社会問題化している。平成18年4月14日の衆議院厚生労働委員会では、川崎厚生労働大臣が医師の長時間勤務に対して、「長時間に及ぶ過重な労働については、診療の質を保つ観点から好ましくない」と答弁している。夜間・休日の小児の受診の増加による小児科医の負荷の増加が問題化していることは事実である。
しかし、この問題は夜間・休日の小児の受診増と医師との対立軸では語れない。たしかに、夜間に受診を要しない子供のコンビニ受診を抑制すべく、患者・保護者教育を行うことは重要である。しかし、医療施設が夜間・休日の受診を応需としながら、受診者に対して不十分な診療しか提供できないことは問題である。
医療の受益者である患者と提供者である医師との対立軸では、現在の小児救急の問題は説明できない。夜間・休日の診療に違法状態で従事させている経営者(病院長、事務長)と勤務する医師との間の労使問題なのである。もちろん、医療の適正配置や夜間・休日診療を健康保険でまかなえるよう医政・医療保険の分野で行政の介入は必要である。しかし、原則的には、雇用主対雇用者との対立軸で夜間・休日診療の勤務問題を解決しなければ、長時間勤務のつけは診療の質の低下となって患者が負うことになる。
そのためには、雇用主との間で医師も勤務者としての義務と権利を自覚する必要がある。医師も医師法・医療法、労働三法その他の法律に精通する必要がある。自戒を込めてであるが、患者対医師の対立軸の中で、受診不要な患者が夜間に救急外来を受診した際に不適切な診療がなされてはならない。
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