メニューの表示にはjavascriptを使用しています。
javascriptの使用をonにしてリロードしてください。
北海道在住 江原 朗
2006年4月11日の第54回労働政策審議会労働条件分科会 (厚生労働省労働基準局)において、自律的労働時間制度の創設 が提示されました。アメリカの「ホワイトカラーエグゼンプション」にならい、ホワイトカラー層の時間外手当てを撤廃し、時間外勤務を青天井とするというものです。「緩やかな管理の下で自律的な働き方をすることがふさわしい仕事に就く者について、一層の能力発揮をできるようにする観点から、現行の労働時間制度の見直しを行う」とは言ってはいますが、現実には時間外賃金を払いたくない財界の意向と考えられます。
小児救急をはじめとして、勤務医の過重労働が社会問題化しています。特に、「小児救急医療を担う小児科医師の勤務状況(小児救急医療拠点病院)に関する緊急調査について」(厚生労働省医政局、2006年3月)によると、小児科医の月あたりの勤務時間は最大370時間とのことです。つまり、労働基準法で定められている週40時間なら、1ヶ月(30日)で171.42時間であるところを200時間近く上回る勤務が行われているのです。しかし、自律的労働時間制度が適用されると時間外の賃金が支給されず、勤務時間の制限も撤廃されることになります。
ニュー・インドランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine )では、ハーバード・ワーク・アワーズ・アンド・セーフティー・グループのランドリガン(Landrigan)氏らの論文 を通じて、最長34時間の連続勤務の方が、16時間以内の勤務に比べて医療ミスの発生率が35.9%高かったと伝えています。つまり、医師が過重労働を行うと自分自身の健康を損なうだけではなく、医療事故の増加が懸念されると言うことです。
自律的労働時間制度の創設は国際競争力の確保から重要であると財界は考えているのかもしれません。しかし、この制度を医療者に適用する場合には、医療者自身の健康管理だけではなく、医療事故の防止の点からも、慎重を期さなければなりません。
javascriptの使用をonにしてリロードしてください。