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医療法人社団 青柳皮膚科医院 理事長
青柳 俊
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「美しい国」日本を目指して、安倍政権がスタートした。 日本の指導者の家系や家庭に育ち、エリート教育を受けた人達が多数政権の中枢に座っている。安倍首相はじめ何人かは、「光のアメリカ」だけを極く短い期間体験しているという。彼らが目指す「美しい国」とはどのような国なのだろうか?「影のアメリカ」を見ずして、「アメリカ」式の国を目指そうとしているのだろうか?安倍総理の本を読んでもそのイメージには極めて偏った印象を持つのは私だけだろうか?
狭い国土に1億2千万が生活している「日本」ではあるが、だからこそ「日本」らしい特徴を持った社会が築かれてきたことを忘れてはならない。「ホモ・サピエンス」であるべき人間を「ホモ・エコノミクス」だけと神野直彦氏に言わせるような社会を生み出そうとしているとしか思われない風潮には強い抵抗がある。「バブル期」を再び或いは「お金がすべて」などと考えるような経済・産業界の「エゴ」を許してはならない。「そこそこの経済環境」で「そこそこの生活」で満足している国民が大多数を占めていることを肝に銘ずるべきである。「美しい日本」の基本的な位置付けは国民の大多数の思いに焦点を当てるべきで、ITバブル長者を生み出すような日本では無い筈だ。
地域における人口の増減が著しい。首都圏を中心として、人口が増える一方、地方では人口過疎地が増加しており、高齢化率が50%を超えるところも出てきている。
「市場化」の嵐は、公共サービスにまで波及し、公共交通機関の廃止、郵便通信サービスの縮小、小中学校の廃止統合、医療サービス機関の縮小廃止の加速が著しい。
「そこそこの生活」で満足しているこれらの地方に住む住民には、「そこそこの生活」が脅かされつつある。しかし、「市場化」に伴い、これら過疎地の公共サービスの縮小廃止は生活の場を「好むと好まざる」とに拘わらず、公共サービスの充実した都市に移さざるを得なくなる可能性が大きい。一次産業を主たる生活の基盤にしている地方の住民にとっては、強制移住を余儀なくされているようなものだろう。
恵まれた環境でエリート教育を受けた安倍政権のメンバーだけでなく、同じような環境で育った経済・財政学者達は「机上の空論」だけでなく、どの程度地方の状況を「見聞き」「体験」しているのだろうか?
公的な社会保険制度で、医療、介護、年金などの充実を図ってきた日本では、地域における医療、介護サービスの充実が最低条件であり、無医村や医療過疎地を解消する努力が続けられてきていたが、財政学者には公的な社会保険制度を否定するような発言も見聞きされる。
「市場化」の掛け声の下に「効率性」が叫ばれ、金銭的な「非効率性」が槍玉に上がって医療の過疎化が問題になって来ている。過疎地域における医師不足や中都市における産婦人科医や小児科医の不足や偏在も著しく地域住民の不安はますます増大しつつある。
これらの問題を解決するためには、単一の処方箋では不可能であろう。強制力を持たして医師を過疎地域に派遣するなどの提案は、「いやいやながら」派遣された医師に診療をゆだねる地域住民にとっては受け入れ難い考えであろうし、今までのように医師の職業倫理や正義感に頼った地域医療の確保にも限界があるだろう。「高所得を売り」に、医師の確保を目指すことも一時しのぎの手段にしかならないように思われる。地域医療に関心を示す医学生は必ずしも少ないわけではない。 彼らがその情熱を失ってしまう理由にメスを入れなければならない。
1. |
「医療に対する不安」「医師に対する不信」を払拭して若い情熱ある医師が目指す地域医療を支援する |
2. |
複数医師による診療体制を確保し「燃え尽き症候群」を発生させない仕組み |
3. |
システムとしての地域医療体制の構築(ローテーション体制を含む) |
4. |
救命・救急体制の地方と都市の連携体制 |
5. |
国や地方自治体による有効な「財政支援」の体制 |
6. |
都道府県医師会、郡市区医師会の地域医療への積極的な取り組み |
これらの体制整備や支援策が包括的に議論・実行されなければ「絵に描いた餅」に終わる危険があるだろう。
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