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(掲載日 2006.10.31)
「産科医5人に超勤手当を払わない奈良県とは」
投稿者  北海道在住 江原 朗
10月21日のasahi.com(朝日新聞社)は、奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医5人が04、05年の超過勤務手当の未払い分として計約1億円の支払いと、医療設備の改善を求める申入書を県に提出したと報じている。医師らは「報酬に見合わない過酷な勤務を強いられている」と訴えており、要求が拒否された場合は、提訴も検討する方針とのこと。

 一方、最高裁第1小法廷は、平成14年02月28日、平成9(オ)608割増賃金請求事件の判決 (裁判所ウェブサイト)において、以下の判決を下している。

1.  労働者が実作業に従事していない仮眠時間であっても、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているものであって、労働基準法32条の労働時間に当たる。
2.  ビル管理会社の従業員が従事する泊り勤務の間に設定されている連続7時間ないし9時間の仮眠時間は、従業員が労働契約に基づき仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられており、そのような対応をすることが皆無に等しいなど実質的に上記義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないなど判示の事実関係の下においては、実作業に従事していない時間も含め全体として従業員が使用者の指揮命令下に置かれているものであり、労働基準法32条の労働時間に当たる。

 つまり、当直時間は労働時間であると最高裁は司法判断を下しているのである。

 また、平成18年4月14日の衆議院厚生労働委員会において医師の時間外勤務に関する質問があり、これに対して川崎厚生労働大臣は、「時間外労働に関する協定、三六協定を締結し、割り増し賃金が支払われていれば、直ちに労働基準法違反となるとは言えないものであります。」との答弁をしている。(国会議事録検索システムHP >>)つまり、三六協定の締結や時間外の割増賃金が支払われていなければ、労働基準法違反であるということが行政的にも認められたのである。

 司法、国家行政において、当直が労働時間として認められているのである。にもかかわらず、奈良県は超過勤務手当ての支払いは拒否したと報道されている。事実であれば、法を遵守すべき地方政府が公然と法を犯していることになる。
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