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日本医療総合研究所 取締役社長 中村 十念 |
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いわゆる「消えた年金問題」の原因は名寄せの失敗にある。
年金には1997年に、国民一人一人にひとつの番号を割り振る「基礎年金番号制度」が導入された。それまでは、複数の年金番号を持つ国民も珍しくなかった。
会社を変わるとその度に違う年金番号が付与され、厚生年金と国民年金間の移動があっても違う番号になったからである。何億もあったであろう年金番号を一気に国民に背番号をつけ名寄せして、約一億に縮めようとした訳だから、壮大な仕事だったに違いない。
しかし、壮大な割には、方法論はお粗末で、国民の自己申告に頼ったのである。広報が不十分だったのか、私の不注意だったのかわからぬが、わずか10年前の話なのに、そのことの記憶は、ない。
これでは、きちんと名寄せできるはずがなく、名寄せしきれずに残った番号が5,000万件という訳である。(その意味では「消えた年金」という言い方は正しくない。逆に消せなかった年金番号と言った方がより正確であろう。)
問題の一つは、この問題が、10年もの間放置され続けてきたことにある。一部のマスコミやジャーナリストが取り上げたこともあったが、社会保険庁や社会保険事務所は頬被りを決め込んだ。
この無責任さは追求されてしかるべきである。政府は損保や生保の不払い追及に熱心ではあるが、国自体のチョンボが見逃されるようではコメディである。
もう一つの問題は、解決策が的外れなことである。消せなかった年金番号の方を一年間で潰していこうということらしいが、過去に出来なかったことが、今出来るとは思えない。誤字、脱字、読み間違い、姓名変更、同姓同名など名寄せが一筋縄ではいかないことは、多くの企業が体験してきたことだからである。
ここは松下電器の欠陥商品のクレーム処理に見習うべきである。逆から遡るのである。会社を変わったことのある人、厚生年金から国民年金に変わった人(その逆も)等にひとり残らず、自分の年金の照会を呼びかけることである。
それも、これでもかこれでもかというぐらい繰り返し呼びかけるのである。呼びかけに応じて問い合わせた人に対しては、適切に対応しなければならないのは言うまでもない。松下電器は、この方法によって企業のブランドを守り、信用を増したのである。
松下方式の難点は、費用がかかることである。しかし、その費用は国民への給付費を削って賄われるべきではない。年金積立金からこっそり持って来るのもいけない。国の通常経費をやり繰りして調達されるべきであることは言うまでもない。
肝心なことは、官僚の焼け太りを見逃してはいけないということである。また、OBのボランティアによる役務提供があれば、社会保険庁の名誉回復にも繋がるし、人件費の節約にもなると思うが、そのような声はあがらないのだろうか。
安倍政権は、この年金問題によって、新たな国家責任の果たし方をためすチャンスをもらった。首相の若さと正義感で正面から堂々と取り組めば、おのずと道は開けるのではないか。
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