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(掲載日 2008.02.01)
高度実践看護師(NP)は医師補か
投稿者  医療法人博寿会 理事長 嶋田丞
 政府の規制改革会議の第2次答申には、医師と看護師の役割分担が盛り込まれている。答申では、訪問介護において医師の事前の指示に基づく看護師による薬の投薬量の調整やナースプラクティショナー(高度な知識を持つ専門看護師=高度実践看護師:NP)の導入による看護師の職能範囲の拡大及び正常分娩での助産師の活用が明記され、今年度から順次実施を要望している。

 国が昨年度発表した今後の医療政策の検討の方向性(厚労省のグランドデザイン)においても、「総合的な医療確保対策の推進」のなかで、医師と関係職種との役割分担のあり方として、医師が本来の業務に専念できるように医師の業務の効率化を図り、関係職種の資質の向上や役割分担のあり方を検討するということが提示されている。

 看護師についても、本来の業務を明らかにし、適切に他職種との役割分担を図るとしている。

 「開業医の役割の重視と総合的な診療に対応できる医師の養成・確保」のなかで、チームで対応し後期高齢者の生活を支援する医療の視点として、後期高齢者を他職種のチームで支え、“医師だけでなく一定のサービスについては医師と看護師との間でプロトコールを作成し、その中で看護師に委ねる部分を委ねて連携できるよう看護師等の資質の向上を図る”としている。

 これは本来医師が行うべき医療の一部を、高度の教育を受けた看護師にも行わせることを意味している。

 我が国では看護学部・学科を設置した大学は平成4年から急増し、全国で144校で看護教育が行われているが、このうち大学院修士課程が設置されている大学は86校に達しているという。

 大学院では大学で学んだ看護実践を基により高度な実践理論・知識・技術の構築を目指すとしているが、その目標としてナースプラクティショナー(NP)の養成課程と位置付ける大学もある。

 一方で、医療制度改革の失敗により、小児科・産婦人科を中心とした医師不足が生じ、地方だけでなく都市部においても十分な医療が受けられなくなっている。

 又、療養病床の削減、平均在院日数の減少策により在宅医療を必要とする高齢者は増え、かかりつけ医の24時間の対応が必要となっている。

 看護大学ではこれらの課題を解決する為に大学院でNPを養成し、医療のなかでの裁量権を拡大し、医師と協働してチーム医療を展開することが検討されている。

 活動が期待される領域として、無医地区や24時間体制で在宅医療を支える医療施設などである。医療機関と連携を図りながら医療僻地で生活している療養者をNPが支えていくことが無医地区の解消、医療費の適正化運用になるとしている。

 すでにアメリカでは処方権が与えられ、オフィスを持って自ら患者の診断・治療にあたることができるシステムも存在するという。

 現在、日本看護協会が認定する「専門看護師」は大学院を卒業後5年間の実践経験が義務付けられた為、9分野の認定で250名しか存在していない。まだ日本には米国のようなNP制度は存在せず、専門看護師にも裁量権は認められていない。

 しかし、地域医療を確保するなかで医師不足、医師の過剰勤務の緩和策として厚労省は看護師の医療業務の拡大を口にしており、その一環としてNP制度が浮上してこよう。

 その際に忘れていけないことがある。後期高齢者医療制度では他職種協働で地域医療を支え、かかりつけ医は主治医として地域ケアのコーディネーター的な役割を果たすことになっている。

 他職種協働といえども個々の職種はお互いにその専門性を尊重することが求められ、垣根は低くしてもお互いの領域を侵すことがあっては協働は成立しないということである。

 医師補のような役割であるNPが患者さんを「看る」ことがあっても、医師の「診る」こととはその役割・信頼・責任に大きな相違があり、医療の質が落ちるような制度改革は国民は望んではいない。

 看護大学の大学院は医師不足とはいえ医師に代わるNPを育てるところではなく、看護レベルの更なる向上に努めることが先決であり、医療関係職種と協調しながらより良い医療提供体制を構築することこそが求められている。
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