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(掲載日 2008.08.08)
後発医薬品の使用促進のウラで進む、
新薬の薬価引き上げ
東京都在住 坂口一樹
後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進政策のウラで、新薬の薬価引き上げに向けた動きが活発になってきている。新薬の画期性等によって薬価にプラスされる補正加算
(注1)
は 、今年もまた引き上げられた(図1参照)。
図1.新薬の薬価に加算される補正加算の動向
医療費削減を狙って、国を挙げて後発医薬品を使っても、引き換えに新薬の価格水準が引き上げられれば、医療費は節減されるどころか、むしろ増える恐れがある。
政府の目論見どおり後発医薬品が普及しても、これまで以上の利益が確保できる制度にしようと、製薬業界はロビイングに必死である。補正加算の引き上げだけではない。
現在、製薬協に代表される新薬メーカー団体が提案している新たな薬価制度は、新薬の薬価を特許期間中は下げないようにしようというものだ。
「後発医薬品の普及を受け容れる代わりに、特許期間中はしっかりと稼がせて欲しい。そうじゃなければ、新薬を生み出す技術革新(イノベーション)へのモチベーションが高まらない。」というのが彼らの主張である。
医療費を押し上げる要因として最も影響力が大きいのは、高齢化でも医師数でも病院数でもベッド数でもなく、“技術革新”によるものであるというのが、米国の医療経済学の業績から明らかになっている。
わが国の医薬品政策においても、“技術革新”とその見返りを如何にマネジメントするかという視点が重要だ。
社会保障費2,200億円の削減は、今年も続行されようとしている。
政府は後期高齢者医療制度でお年寄りに負担を強いて、医師の過重労働や医師不足問題がこれほど顕在化するまで医療費を抑えたのみならず、医療難民が発生するまで病院とベッドの減反政策を取っておきながら、製薬業界の利益は保護しようというのでは、あまりにバランスを欠いた話ではないか。
今、我々が考えるべきは、優先順位である。製薬業界が声高に訴える“技術革新”に対する見返り要求は、医療にかかわる他の問題と比べて、決して優先すべき問題とは思えない。
そんな財源があれば、先に解決すべき問題が山積している。
(注1)
画期性加算とは、@「臨床上有用な新規の作用機序を有すること」、A「類似薬に比して、高い有効性又は安全性を有することが、客観的に示されていること」、B「当該新規収載品により、当該新規収載品の対象となる疾病又は負傷の治療方法の改善が客観的に示されていること」、の3つの要件すべてを満たす新薬の薬価に適用される加算のことである。有用性加算(I)とは、画期性加算の3要件のうち、2つの要件を満たす新薬の薬価に適用される加算のことである。有用性加算(II)とは、画期性加算の3要件にC「製剤における工夫により、類似薬に比して、高い医療上の有用性を有すること」、を加えた4つの要件のうち、いずれかの要件を満たす新薬の薬価に適用される加算のことである。
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