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医療メカトロニクスバックナンバー一覧へ >>
病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第1回
『AED(自動対外式徐細動器)』
連載3 ― 「『居合わせた人』がAEDを使う重要性」
(掲載日: 2007.02.16)
<< 連載2 「心臓が止まるとは−その医学的定義−」
今回は、わたしたちがAEDを使えるようになることが、救命にどう影響するかを確認していきたいと思います。
1.AEDは簡単?
通常の医療用の除細動器は、心室細動かどうかを医師が心電図の波形を見て判断し、除細動(電気ショック)をかけていました。
しかし、AEDは自動的に心電図を解析して除細動が必要かどうかを決定し、通電スイッチを押すよう促します(正常な波形、通電効果がないと判断すれば、誤ってスイッチを押しても電流は流れません)。
使う人は、音声ガイダンスに従って、電極を患者の体に貼り、通電スイッチを押すだけです。一般の人でも簡単な講習を受ければ扱える機械です。
2.患者を救うタイミング
心停止の患者を救うチャンスは心室細動の時期にありますが、そのチャンスは非常にわずかな時間でしかありません。
心室細動による心停止では、除細動が1分遅れるごとに生存の確率は7〜10%ずつ減っていくと言われています(図6)。
目の前で人が倒れたら、一刻も早く心室細動かどうかを判断し、除細動を行う必要があります。日本の救急隊は出動要請があってから現場到着まで6分かかります。その後除細動を行っても、命を救うチャンスはほとんどありません。
救える命を救うためには、現場に居合わせた一般市民がすぐに除細動を行うことが一番効果的です。
3.AEDの効果
AEDの効果を検証したアメリカの有名な研究を一つ紹介します。
【カジノプロジェクト】(2000年) ― 「カジノの警備員によるパブリック・アクセス除細動」
訓練を受けた一般市民が除細動を行うことをパブリック・アクセス除細動(PAD:Public Access Defibrillation)と言います。
この研究では、カジノの警備員たちにあらかじめAEDの使用法を訓練しました。カジノ内で心肺停止が発生した場合、警備員たちは救急隊の到着前にAEDを使用して早期除細動を行いました。
その結果、倒れたのが目撃されてから早期に除細動を行った場合、50%以上の高い生存率が得られました。当時の米国内での心室細動患者の生存率が7%程度であったことを考えると驚異的な数字です。
<POINT!>
※
心停止の原因は心室細動が一番多く、これは早期の除細動により治療することが可能。
※
AEDを普及させ、一般市民による早期除細動(PAD)を可能にするシステムを作ることが心肺停止患者の救命率を上昇させることにつながる。
今回は、わたしたち一般市民がAEDを使う重要性が分かっていただけたと思います。次回は、AEDと並んで救命に必要な処置の話です。
連載4 「AEDだけで救命できるのか >>
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