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医療メカトロニクスバックナンバー一覧へ >>
病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第2回
『レントゲン』
連載4 ― 「 放射線の影響(その1) ―人体への影響の分類―」
(掲載日: 2007.03.30)
<< 連載3 「 放射線による被ばく」
連載3では、放射線が細胞に及ぼす影響について述べました。
では、人体にはどんな影響を及ぼすのでしょうか? どれくらいの量の放射線を浴びたら影響が出るのでしょうか?
1.確定的影響と確率的影響
放射線の影響について知るためには、はじめに「確定的影響」と「確率的影響」という2つの用語を理解することが大切です。
○確定的影響:
ある線量以上の放射線を浴びると「確実に出現」する障害で、線量が増えるにしたがって症状も増悪していきます。そして、その障害が出現する線量を「しきい値」と言います。主な障害は、皮膚や造血機能の障害、白内障、胎児の奇形などです。
○確率的影響:
しきい値がなく、線量が増えると障害が「出現する確率が高く」なります。しかし、線量が増えても症状は増悪しません。主な障害は、がんや白血病です。
2つの用語の違いを、自転車こぎを例に分かりやすく説明しましょう。
自転車をがんばってこぐと、そのうち汗をかいたり、疲れてきたり、筋肉痛になります。さらにがんばると、自転車をこげないほどになります。そして、それ以上こぎ続ければ、命の危険さえ出てくるでしょう。
このときの発汗、疲労、筋肉痛が「確定的影響」です。猛烈にこげばすぐに汗(影響)が出てきますし、ゆっくりこいでもそのうち影響は出てきます。汗をかかない人がいないように、だれにでも影響は出現するというわけです。
しかし、何らかの影響が出る前に自転車を降りることもできます。この“影響が出現する値”が「しきい値」です。
一方の「確率的影響」にたとえられるものは何だと思いますか?自転車なら、交通事故です。
自転車に乗っていれば事故にあう可能性があります。自転車に長い時間乗るほど事故にあう確率は高くなりますが、残念ながら家を出てすぐに事故にあう人もいます。自転車に乗っているかぎり、自転車での事故の可能性はゼロにはなりません。当然、しきい値は存在しないということになります。
2.身体的影響と遺伝的影響
人体への影響について分類した方法はほかにもあります。
○身体的影響:
被ばくした本人に出る影響を言います。
身体的影響には、被ばく後、数週間程度で症状が出現する「早期影響」と、数か月以降に出現する「晩発影響」があります。
○遺伝的影響:
被ばくした人の子孫に出る影響を言います。
以上の分類を表2にまとめました。
<POINT!>
※
確定的影響/確率的影響
「確定的影響」:ある線量(しきい値)以上の放射線を浴びると確実に出現する。
「確率的影響」:しきい値がなく、線量が増えると出現する確率が高くなる。
※
身体的影響/遺伝的影響
「身体的影響」:被ばくした本人に出現する。
「遺伝的影響」:被ばくした人の子孫に出現する。
※
早期影響/晩発影響
「早期影響」:被ばく後、数週間程度で出現する。
「晩発影響」:被ばく後、数か月以降に出現する。
次回は、放射線が人体に及ぼす影響を、分かりやすく数値で示すことにしましょう。
最終連載 「放射線の影響(2) ―被ばく線量と人体への影響の関係―」 >>
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