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病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第6回
『医療用超音波』
連載1 ― 「超音波の基礎知識」
(掲載日: 2007.07.13)
さて、超音波っていったい何なのでしょう。
イルカやコウモリが、超音波を利用して周りの物を感知していることはよく知られています。超音波は、病院では超音波検査や超音波エコーで使用され、また検査以外にも様々な治療に活用されています。
超音波は、簡単に言うと「人には聞こえない音波」のことです。人の能力を超えるから超音波。
筆者は、小学生のときに暗い洞窟の中を自由に飛び回るコウモリの秘密を知り、高校生で『沈黙の艦隊』を読んでソナー(音波を海中に放射して、その反射波により艦隊を探知する装置)を知りました。未知の科学に触れた当時の興奮や感動は、今でも鮮明に思い出されます。
「超」とつくだけで思わず構えてしまいますが、超音波の理論は、実はそんなに難しい話ではありません。高校物理の範囲で理解できることがほとんどです。
今回は、超音波を含む音波の説明に始まり、超音波の特徴、実際の超音波検査や治療といった順で進めていきたいと思います。
1.波(波動)
音波は、「空気や水や固体を伝わる波(波動)」のことです。
波動では、“物質が移動せずにその振動だけ”が伝わります。海に浮いている船は波に合わせて上下しますが、決して遠くにどんどん運ばれていくことはありません。
イメージしてみましょう。例えば、2人で1本のひもを持って離れて立ちます。どちらか一方がひもを揺らすと、ひもの揺れだけがもう1人に届きます(図1)。ひもの一部分が移動するわけではありません。
波が伝わるとき、ひものそれぞれの部分はどのような振る舞いをしているのでしょうか。
分かりやすくするため、ひもの途中に目印となるテープを付けて揺らしてみます。山が1個、谷が1個の波を“基本の波”と考えます。
波が1つひもを伝わっていきます(図2)。谷の部分がテープに到達すると、テープは徐々に下がっていき、最も下まで下がったところで、今度は上がり始めます。最も上まで上がると、また徐々に下がり始め、元の位置に戻ります。
2.周波数
時間経過とテープの高さの変化を図にしてみると、波の形をしていることが分かります(図3)。テープが下がって、上がって、元に戻るまでを「周期」と言います。また、この動きを1秒間に何回繰り返せるか、その回数を「周波数」(単位はヘルツ:Hz)と言います。1秒間に波が1回なら周波数は1ヘルツ(1Hz)です。
次に、ひもを伝わる波の速さを定義してみましょう。
そのためには再度、ひもの波を見る必要があります。基本の波は山1個、谷1個です(図4-a)。この1つの波の長さを「波長」と言います。図3の横軸は時間でしたが、図4-aでは長さ(距離)になっていることに注意してください。波がひもを伝わるとき、テープが1回上下すると波は1つ分だけ進むことになります(図4-b)。
周波数は1秒間にテープが何回上下するかということですから、波の速さ(1秒間に進む距離)は
波の速さ=周波数×波長
となります。
<POINT!>
※
超音波とは、「人には聞こえない音波」のこと。
※
音波とは、「空気や水や個体を伝わる波(波動)」のこと。
※
周波数とは、波動(波の振動)の速さのこと。1秒間に振動する回数で表す。単位は、ヘルツ[Hz]。
※
波長とは、1つの波の長さのこと。
連載2 ― 「なぜ波ができるのか」 >>
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