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医療機器メカトロニクス
病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第8回 『パルスオキシメータ』  
連載1 ― 「色を見るための必要条件とは」
(掲載日: 2007.10.12)
 皆さん、『手のひらを太陽に』という歌を知っていますか?

 小学校の教科書にも載っている有名な歌です。その歌詞に、「手のひらを太陽に すかしてみれば まっかに流れるぼくの血潮(ちしお)」というフレーズがあります。

 小学生の頃、歌詞どおりに手のひらを透かしてみたことがあります。夏の太陽にかざした手は、鮮やかな赤色をしていました。なぜ赤く見えるのか?

 その理由は全身を流れる血液だ、と聞いてとても驚きました。自分の血液を見ているのは不思議な感覚でした。

 一方、呼吸状態が悪い人の顔は青紫色をしています。これは医学用語でチアノーゼと言い、血液中の酸素が少なくなると出現する症状です。前回の連載でも触れましたが、酸素を多く含んだ動脈血は赤く、少ない静脈血は同じ赤でもやや暗い感じになります。

 この酸素を多く含んだ血液は赤いというシンプルな現象を利用した呼吸モニターが「パルスオキシメータ」(図1)です。

 パルスオキシメータは、血液の色をもとに血液中の酸素の濃度を測定していきます。機械が色を識別するしくみを知るためには、まず人間が色を識別するしくみを知る必要があります。

 ですから、今回の連載では、はじめに“物を見る”という視覚現象のメカニズムに迫ります。1.赤く見えるというのはどういうことなのか(物が見えるしくみ)について、2.酸素を運ぶ血液のしくみについて、3.パルスオキシメータの原理について、の順で話を進めていきたいと思います。

1.色(物)の認識

 本題からは少しずれますが、“なぜ色が見えるか”について考えてみます。色というよりも、“なぜ物が見えるのか”と言ったほうが適切かもしれません。

 私たちが物を見るには、(1)光源(照明する光)、(2)物体(見る対象物)、(3)視覚(見る主体となる眼)、という3つの要素が必要です。

 太陽や電灯の光が物体に当たり、反射あるいは透過した光が眼に入ることにより、物が見えます(図2)

<POINT!>
 私たちは光のない所では何も見ることができない。光源から放出された光が物体に届いて反射あるいは透過し、その光が目に届いて、はじめて形や色を知覚することができる。

 物が見える秘密は、光にある。その秘密を次回で解き明かすことにしましょう。
連載2 「色と光の関係」 >>
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