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社会的抑止力として健康診断にHIV、覚せい剤検査を |
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株式会社JPRONメンタルヘルスケア・ヘルスプロモ−ション研究所
カウンセラ−、労働衛生コンサルタント
清水 隆司
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澤先生、私の意見に対して、率直なご提言、感謝申し上げます。
確かに、「覚せい剤」使用は犯罪であり、検挙されるべきものです。しかし、私は、覚せい剤に不幸にして依存しないと生きていけない人を生みだす環境・社会そのものを変えること、そして、そういう覚せい剤に依存した人の治療が先決と思います。「罪を憎んで人を憎まず」と言うのではないですが、医師として「人」を治すことを重要視したいと思っています。
警察白書(平成18年度)で、17年度に押収された乾燥大麻は643kg(平成13年度の約3倍)、MDMA等錠剤型合成麻薬等は571kg(平成13年度の約4倍)と記載されています。押収されている量は、氷山の一角と思います。押収されている量が増加していることは、それを使用している人も増加していると容易に推察できます。実際に、地域の精神保健福祉センターの方に伺うと、覚せい剤・麻薬により脳に著しい障害を受けている人もまれではないそうです。
エイズの件ですが、平成18年1月1日現在で、患者・感染者数は10,961名で増加に歯止めがかかっていません。先進国で唯一増加傾向なのは日本なのです。しかも、厚生労働省エイズ動向委員会「2005年エイズ発生動向」によれば、日本国籍女性HIV感染者の感染経路は、異性間の性的接触、すなわち、男女の性行為に伴う感染が多いとされています。また、献血した血液からHIV抗体陽性が発見される割合は、欧米並みである事実を直視しない訳にはいきません。
確かに、HIV感染者に対する差別はなくさないといけませんが、まずは、HIV感染者に対して医療やケアを早期に提供することが重要だと思います。自費でHIV検査をして、陽性とわかると、復讐心に駆られて、多くの人に感染させてから、治療に行く人もあると聞いています。これでは、HIV感染者を増加させるばかりです。
また、山田昌弘らの「離婚急増社会における夫婦の愛情関係の実証研究」では、日本は、アメリカ以上に婚外の性交渉を容認する傾向にある、と報告されています。そういう性交渉に対する考え方と、HIV陽性者に対する精神的ケアの不足から、感染を防げない場合がある点についても理解すべきでしょう。
覚せい剤・麻薬・アルコール依存、そして、HIV感染は、日本国内では、我々の想像以上に深刻であり、我々、医療従事者は、それらに対する医療的なケアの提供を急ぐ必要があることを真摯に受け止めなければいけないと思います。それが、次の世代にバトンを渡す責任であると、私は思っています。
以上の理由から、社会的抑止力として、健康診断に覚せい剤、HIV感染検査を加えてはどうかというのが私の意見です。
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