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へぇーそうなんだ
東京・赤坂の寿司店主が食に関連する、ちょっとした豆知識を語ります。
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寿司の数え方


 おすしって、「ひとつ、ふたつ、、、」、「一個、二個、、、」ではなく、「一かん、二かん、、、」って数えるじゃないですか。「一かん」の「かん」は漢字の「貫く」という字なんです。で、なんで「一貫、二貫」って言うんだろうと、疑問に思いませんか。

 今回はそれをお話しようとかと思います、これには、いろんな説があり、これだというはっきりしたことはわからないのですが、まず、「一貫」というのは三・七五キログラムの重さのことなんですね。三・七五キログラムというのは、お米の重さの一合、二合に直すと二升五号になるんです。

 昔は炊飯ジャーとかガス釜ではなく、土間にある釜戸に薪をくべて燃やし、その上で米を炊いていました。炊くときの基本は二升五合。親方が若い衆に「おい、今日はシャリは一貫炊いておけ」「二貫炊いておけ」なんて言ってた訳ですが、要するに「二升五合を一回炊いておきなさい」、「二回炊いておきなさい」、そんな意味で「一貫、二貫」っていう言い方をしたという説があるんですよ。

 ただし、今は、シャリを炊くときの基本分量は「二升」とされています。で、二升を一回炊くのを「一本」、二回炊くのを「二本」って言ってます。「二升」は基本。回転寿司やテイクアウトのお店などでは四升ぐらいで炊いているらしいですけれど、普通のお店はだいたい三升で炊いてるそうです。でも、ベストだといわれているのは、二升なんですね。

 なんで「一貫、二貫」なのかに戻りますけれど、もうひとつは、煙管(きせる)に詰めるタバコの葉を入れるためのポーチのような箱のことを一説によると「いっか」と言っていたというんですよ。ベルトにつけて持ち運びできる箱なんですが、その形といい、大きさといい、厚さといい、握りずしにそっくりだったんですって。とくに大きさが。昔の握りというのはメチャクチャ大きかったですから。

 そこから、一個のすしというのは「『いっか』に似てるね」ということで、すしのことを「いっか」「にか」「さんか」と呼ぶようになり、それがいつの間にか「一貫」「二貫」「三貫」になったという説もあります。

 それともうひとつ。昔の人は、川から水を運ぶのに両端に壺をぶら下げた二メートルぐらいの長さの天秤棒を肩にかついだものですが、これを「一荷(いっか)」って言ったらしいんです。同じ重さの水が入った同じ大きさの壺を二つぶらさげ、それを一荷、二荷と数えたことから、すしの一貫、二貫につながったらしいんです。すしも同じ重さ、大きさの二個ずつ出すからなんですね。

 この三つですね、いままで僕が人から聞いたり先輩、お客様から聞いたりしたのは。みんな、一貫、二貫ってなんで言うんだろう、って、疑問に思いますでしょう。

 次はどうして寿司は二個ずつ出すのかというお話をしましょう。これは、シャリの大きさと関係しますが、先ほどお話したタバコの葉入れの「いっか」が、今のタバコ一箱分の大きさだったらしいです。かなり大きいですね。おにぎりぐらいあります。それぐらい、昔の寿司は大きかったんです。

 ですので、巨大なお寿司が出てきたわけですが、この大きさの寿司は、力仕事をしている男の人だったら、一気にがぶりといけるかもしれませんけれど、子供や女性は食べきらないわけですよ。それで、板前がかわいそうだな、っていって、女性と子供には握ったのをいちいち半分にして二個にして出していたんですって。そこから、いつの間にか寿司ってのは、二個ずつ出すようになったらしいんですよ。これは、江戸の終わり頃から明治にかけての話だそうです。

 ですから、昔は、普通は二個、三個食べただけで、もう十分ということだったんですね。昔はネタの種類も少なかったですから、それでよかったのでしょう。今なら、良い寿司屋ってのは、最低二十五種類のネタを用意しておかなければならない、と言われてますけれど、昔は五種類とかそんなものしかなかったんですよ。

 女性、子供も食べやすいように切って出していたのが、そのうち、いちいち切るぐらいなら、一つひとつ握ったほうがいいじゃないですか。そこから二個ずつ握るようになったそうなんです。

 それと巻き物の話もしましょう。鉄火巻きは六個に分けて切って出しますが、かんぴょう巻きは四個だってご存知ですか。なんでかって言うと、昔は、寿司は巻き物もすべてが大きくて、巻き物も半分か四つ切りにしかしなかったそうなんです。昔は巻き物といえば、かんぴょう巻きしかありませんでしたから、その名残りなんですね。寿司が小さく握られるようになって、巻き物も六個に分けて切るようになりましたけれど、そうなったのは、鉄火巻きや梅巻きっていう、新しい巻き物からのことなんですね。
掲載日:2006年06月02日

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