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医療メカトロニクスバックナンバー一覧へ >>
病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第6回
『医療用超音波』
連載5 ― 「超音波検査の原理(その1)―超音波診断装置―」
(掲載日: 2007.08.10)
<< 連載4 「超音波は音の仲間(その2)―音波の性質―」
1.超音波の発生方法
超音波が「人に聞こえない高周波数の音波」であることは分かりました。では、どのように超音波を発生させているのでしょうか?
超音波を発生させるには、ある特殊な物質に高周波交流電流を流します。
交流電流とは、周期的に電流の流れる向きや量が変わる電流です。交流電流が流れると、その変化に合わせて、この物質は伸び縮みを繰り返します(図11)。これにより周囲の空気も密度(圧力)が周期的に変化し、振動(=超音波)が発生します。
逆に、この物質に超音波が当たり機械的な刺激(音響)を周期的に繰り返すと電流が発生します。こういった性質を持つ物質を「超音波振動子」あるいは「超音波トランスデューサー」と呼びます。
“トランスデューサー”とは、ある刺激を電気刺激と変換する物質のことです。超音波トランスデューサーとしてよく使用される物質には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)があります。
2.医療用の超音波
医療用として使われる超音波は、主に2つの目的に分けられます。検査用と治療用です。
検査用の場合、「超音波検査」または「超音波エコー」と呼ばれ、内科や産婦人科で使用されています。
一方、治療用の超音波は、整形外科で打撲や捻挫などの治療に、眼科では白内障の手術で水晶体を砕いて取り出す(水晶体乳化吸引術)ために使用されています。
超音波エコーでは、生体内に超音波を照射し、反射(エコー)した超音波を測定して断層像を得ます。その原理を詳しく解説していきましょう。
3.超音波診断装置
(1)エコー法
小さな超音波トランスデューサー(振動子)に電流を流し、一瞬で終わる超音波(短時間の波のことを「パルス」と呼ぶ)を発生させます。
生体内を進んだ超音波パルスは、その組織が変わるところで一部反射されます。
連載4
で述べたように、“超音波は音響インピーダンスの差があるところで反射される性質がある”ためです。当然、組織ごとに音響インピーダンスは違います。また、その音響インピーダンスの差が大きくなれば反射率も増えていきます。
反射した超音波(「エコー」または「超音波エコー」と呼ぶ)は、再び振動子に届き、電気信号に変換されます。図12が単純化した模式図です。
これにより超音波が発生してから超音波エコーが振動子に到達するまでの時間と、到達したエコーの強さが分かります。また、生体内の超音波の速さ(音速)は大体1,530m/sと一定です。超音波は、振動子からA点までを往復しているので、距離は1/2と考えます。A点までの距離は以下の式で表せます。
A点までの距離=到達までの時間×超音波の速さ÷2
これでA点がどこにあるか分かりました。
また、A点で反射した超音波エコーの強さを、強ければ強いほど明るく(白く)写る点として表現します。このような処理により振動子1個分の画像が得られます。
幅広い画像を得るためには、振動子が動いて行くか、たくさんの振動子があればよいわけです。
(2)プローブの走査方式
超音波診断装置の振動子がある部分がプローブ(探触子)です。
図13-aのプローブは、多数個の振動素子からなっていて、そのうちの数個がグループとして順番に作動してエコー信号を得ていきます。このような作業を走査(スキャン)と呼び、平行に走査するものがリニア走査です。走査方式には、ほかにもセクタ走査などがあります(図13-b)。
<POINT!>
※
超音波トランスデューサーは、電気エネルギーを超音波(音響エネルギー)に、超音波(音響エネルギー)を電気エネルギーにそれぞれ変換する。
※
超音波エコーは、生体内にパルス波を送り、その反射(エコー)が戻ってくる時間を測ることにより距離の測定を行い、断層像を作っている。
以上が超音波検査の主な原理です。次回からは、検査の際の留意点と補足です。
連載6「超音波検査の原理(その2)―超音波の欠点―」 >>
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