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医療機器メカトロニクス
病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第8回 『パルスオキシメータ』  
連載4 ― 「酸素を運搬する人体の生理(その1)
―赤血球とヘモグロビン―」
(掲載日: 2007.11.02)
<< 連載3 「色識別の視覚メカニズム」
1.赤血球

 血液中で酸素を運ぶ役目を担っているのは赤血球です。

 赤血球は、血液1μl(1マイクロリットルは1mlの1000分の1)中に500万個含まれています(赤血球数)。体積で言うと、血液全体の40%くらいを占めます(血液中に占める赤血球の体積の割合をヘマトクリット(Ht)と言います)。1mlの血液における赤血球の数は50億個にもなります(図8)

 では次に、赤血球1つ1つを考えてみましょう。

 赤血球は、中心のくぼんだおはじきのような形(図9)をしていて、骨髄で造られ、寿命は120日くらいと言われています。

 赤血球は自在に形を変化させることが可能なために、細い毛細血管の中も詰まることなく通り抜けていきます。実際、肺胞毛細血管の径は5μm(1マイクロメートルは1mmの1000分の1)と赤血球の径(7〜8μm)よりも小さいのですが、通過できるのです。

2.ヘモグロビン

 赤血球の中で、酸素と結合するタンパク質がヘモグロビンです。

 ヘモグロビンは4つのサブユニット(タンパク質成分)に分かれ、それぞれに1つずつ酸素が結合します(図10)。このサブユニットの構成成分として重要なのが鉄原子です。この鉄原子のためにヘモグロビンは赤色を呈します。



 酸素と結合した「酸化ヘモグロビン」は赤く、結合していない「還元ヘモグロビン」はやや青みがかった赤色になります。

 皮下の静脈が青く見える理由は、静脈血は酸素が少なく還元ヘモグロビンが多くなるためです。血液中のヘモグロビンの3分の1が還元ヘモグロビンになると、組織の色も青みがかって見えるようになり、これをチアノーゼと言います。

 ちなみに、ヘモグロビンは血液100ml中に15g程度含まれています。採血結果ではHb(ハーベー)で表され、貧血かどうかの重要な指標になっています。

<POINT!>
 赤血球は、ヘモグロビンと呼ばれる鉄を含む赤い色のタンパク質を含有している。。
 ヘモグロビンは、酸素と結合して「酸化ヘモグロビン」となり、酸素の不足した組織で酸素を離して「還元ヘモグロビン」となる。

 次回は、呼吸によって取り込まれた酸素が、どのような経路で全身に運搬されていくのか。そのしくみを説明します。
連載5「酸素を運搬する人体の生理(その1)―呼吸と拡散―」に続く >>
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