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病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第9回
『心電図』
連載2 ― 「心電図の基本的知識(その2) −ベクトルの性質1−」
(掲載日: 2007.12.07)
<< 連載1 「心電図の基本的知識(その1) −心電図とベクトル-」
1.ベクトルの定義
まずは、分かりやすい例からいきましょう。
小学校の校庭に点Aと点Bの2つの点を定めます。点Aには太郎君が立っていて、先生の合図で点Bまで走っていきます。
この時の太郎君の移動量がベクトルAB(ベクトルエービーと読む)です。ベクトルABは、AからBという「向き」とAB間の距離という「大きさ」の2つを1度に表します。
図3
では、AからBまで引いた矢印がベクトルABです。
ここで注意しなければいけないのは、大きさが同じでも向きが違えば違うベクトルだということです。太郎君がBからAまで移動したときのベクトルBAは、大きさが同じでも向きが違うので同じベクトルとはなりません。
(1)同じベクトル
“2つのベクトルが等しい”とは、2つのベクトルの向きと大きさが等しいことを言います。図3の校庭に点Dと点Eを定めます
(図4)
。
DとEを結ぶ直線はAとBを結ぶ直線と平行で距離も同じだとします。
そこで、次朗君がDからEまで移動したときのベクトルはベクトルDEです。
最初の定義から、ベクトルABとベクトルDEは同じベクトルなのが分かりますね。
これを ベクトルAB=ベクトルDE と書きます。
始点がAとDと違っていても同じベクトルです。向きと大きさが同じであればよいのです。
2.ベクトルの足し算、実数倍、引き算
(1)ベクトルの足し算
太郎君が引き続き点Bから点Cに移動すると、最終的にAからCまで移動したことになります。
これを式で書くと ベクトルAB+ベクトルBC=ベクトルAC となります
(図5)
。
ベクトルは、
(図6-a,b)
のように何個でもつなぎ合わせることができます。実際に、自分でいろいろ書いて慣れましょう。
(2)ベクトルの実数倍
また、ベクトルABと向きが同じで大きさが異なるベクトルはベクトルの前に数字をつけて表します2倍の大きさなら2ベクトルAB、3倍なら3ベクトルABなどです
(図7)
。
(3)ベクトルの引き算
ベクトルaと大きさが同じで向きが反対のベクトルを−ベクトルaと表します。
このように定義すると、
例えば ベクトルa−ベクトルb=ベクトルa+(−ベクトルb) となり引き算が定義できます
(図8)
。
ここまでの説明で、ベクトルの性質が分かってきましたね。
しかし、心電図を理解するには、もう1つ重要な性質があります。
次回で、説明することにしましょう。
連載3「心電図の基本的知識(その3)-ベクトルの要点2-」 >
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