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病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第9回
『心電図』
連載7 ― 「心電図の波形」
(掲載日: 2008.01.11)
<< 連載6「心臓の電圧の検出方法(誘導法)」
心臓に発生した電流や電圧は、心臓が立体であることから向きと大きさを持ったベクトルと考えられます。今までの説明では心臓全体の電気活動をベクトルで表していましたが、この項ではもう少し小さい視点で心臓の電気活動を見ていきます。
1.心電図波形の成り立ち
心筋細胞は細胞から細胞へ興奮を伝達しています。興奮の伝達は小さなベクトルです。この小さいベクトルを合成すれば、心臓全体をどのように興奮が伝わっていくかベクトルで表せます。U誘導で表したのが以下の
図20
です。
洞結節から房室結節まで興奮が伝わる間に心房は収縮します。このときの波形がP波です。続いて、房室結節から心室中隔の左脚・右脚を伝わり心室が興奮します。この時心室は収縮し血液を送り出しますが、このときの波形がQRS波です。
最後に心室の興奮が終わり、再分極(次の脱分極の準備を始める)しているときの波形がU波です。
図20
は、U誘導で心電図波形を描きましたが、誘導が違えば当然波形も変わってきます。
2. まとめ
心筋細胞で起きた興奮の伝達という小さいベクトルを合成したのが心臓全体のベクトルです。このベクトルは興奮の伝導に合わせて、向きや大きさを変えていきます。これを12個の向きで測定したのが12誘導心電図です。
また、病室や救急車内でのモニタリングに使われる心電図は3つの電極からなっていて、T〜V誘導まで表示することが可能です。
<POINT!>
※
心臓全体のベクトルは、時間的に向きや大きさが変化する。
※
12誘導心電図は、各電極に向かう12個の向きで電圧を測定し、総合的に心臓の様子を判断するものである。
■おわりに
ベクトル、心臓の刺激伝導系、心電図の原理と書き進めてきました。心電図は物理の知識だけではなく、ベクトルという数学の基本が非常に大事になってきます。ベクトルの理解を深めておけば心電図の理解もスムースになるのではないでしょうか。
技術の進歩と医師の診断技術の向上により、多くの病気が心電図で分かるようになりました。各病態でどのような心電図変化が起こるかは、基本からは少し離れてしまいます。そちらについては、別の成書を参考に勉強していただければと思います。
■参考文献■
1) 五島雄一郎、ほか監修;大林完二、ほか編集:心電図のABC(改訂2版).協和企画,2006
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