しかし、極め付きは、そのことをつきとめた国際研究グループの1つで、Barbara. J. Trask率いる女性研究者グループがとらえた新知見であろう。染色体の末端に近いサブテロメア領域をヒトとチンパンジーで比較してみると、遺伝子の重複や再編成などの変化――つまり、「分節重複」と呼ばれる配列のパッチワーク――が起きやすいことが示唆されたという。つまり、この領域が、両種間の遺伝的違い、つまり、人類とチンパンジーの進化の違いを読み解くホットスポットである可能性があるという。
Barbara. J. Trask氏の研究グループは、この染色体の片隅に、サルからヒトへの進化の秘密が隠されていると指摘したのである。ところが話はそれで終わらない。「これは、どういうことだ?」――。遺伝診療科の専門家たちは、この人類進化上の重要発見が内包する、もう1つの意味の深刻さを語るとき、声をひそめざるを得ない。専門家のヒソヒソ話ほどこわいものはない。チキン・リトルの話ではないが、本当に空がおちてくることだって、あり得るのだ。
2001年にティム・バートン監督によってリメイクされた「PLANET OF THE APES・猿の惑星」では、ディープ・スペースへと開発の手を伸ばす人類の相棒として、遺伝子操作により、高い知能をもったチンパンジーが登場する。深宇宙スペース・ステーション、オベロン号に乗ったチンパンジーのパイロット、ペリクリーズは、惑星間の偵察に目を光らせていた。そんなとき、宇宙空間に大規模な磁場の異常が認められ、ペリクリーズは偵察ポッドに乗り込み調査へと向かうが、磁気嵐に巻き込まれ交信不通となってしまう。相棒を救出するべく、宇宙飛行士レオ・デイビッドソン(マーク・ウォルバーグ)は上官が止めるのも聞かず、宇宙へと飛び出して行く。そして、彼らがたどり着いた惑星は・・・というストーリーだ。ラスト、無事地球に生還したレオが不時着したのは、首都ワシントンのリンカーン記念堂前の広場であった。