ソウル大は今年1月中旬、ヒト・クローン胚から胚性幹細胞(ES細胞)を抽出したとする米科学誌掲載の黄教授の2論文について捏造と断定した。クローン犬は本物だと発表していたが、それを結論付ける検証結果は示さなかった。しかし、メディアにおける論文捏造事件の熱が冷めたかにみえた3月上旬、英科学誌ネイチャーは、2006年3月9日号で、黄ウソク教授らが「世界初の体細胞クローン犬」と同誌に昨年発表したアフガン犬「スナッピー」について、それぞれ「本物」と結論づけた米国立衛生研究所(NIH)とソウル大調査委員会による検証結果を掲載したのである。(著者注:このクローン犬は、「Seoul National University(ソウル国立大学)」の頭文字と子犬の意味の「puppy」の尻文字を取って「スナッピー」と名付けられた)。
刷り込み遺伝子による発現蛋白のうち、注目されるのはインスリン様成長因子U受容体(Insulin like growth factor U receptor:IGF2R)である。IGF2Rはマウスで刷り込み遺伝子によって刷り込まれていることはすでに報告され、よく知られている(Nature 1991: 349: 84-87)。その後研究者らはIGF2Rを欠損させたノックアウト・マウスの仔にBeckwith ―Wiedmann症候群類似の、すなわちクローン個体LOSと同様の病態(巨大児、肺形成不全)を呈することを明らかにした。マウスには確実にIGF2Rは刷り込まれている。しかしヒトではどうなのか?