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(掲載日 2005.12.20)
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■重複した画像

 そして、ついには、黄教授の英雄神話を覆す証拠が、擁護論飛び交うウェブ空間に表れたのである。それは、黄教授の論文に掲載された培養細胞の写真であった。

 サイエンス誌、ネイチャー誌などの学術誌は、知的財産への配慮から速報性を重んじ、電子版と呼ばれるウェブ論文の形式をもつ。通常ペーパー記事の1ヶ月前にウェブ上での閲覧が可能になる。

 黄教授の論文でいえば、昨年の記事が2月12日付け電子版と3月12日の原著、今年の記事が5月19日付け電子版と6月17日の原著の2種類がある。

  問題の画像は、今年5月19日付の電子論文の補足資料で、患者11人から採取した培養細胞がそれぞれ生育していることを示した複数の写真が、実は同じ培養細胞を撮影したものだったことを、12月5日、ニューヨーク・タイムス紙の電子版が報じたのだった。黄教授はサイエンス誌の問い合わせに対し、電子メールの回答で事実関係を認め、「コピー・ミス」と釈明しているという。

 ここに韓国の生命工学領域の国家戦略は終焉した。以上が今回の事件の顛末である。
※(1)
ES細胞:胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell)。さまざまな臓器細胞への分化能力をもった万能細胞。幹細胞は厳密には3種類に分けられる。脂肪組織などの体細胞から得られる体性幹細胞、骨髄から分離される骨髄幹細胞、受精卵から加工されるのが胚性幹細胞である。ES細胞にも、受精卵由来のES細胞と、皮膚などの体細胞の核を移植(nuclear transfer)したクローン胚由来のES細胞の2種類がある。文部科学省「特定胚およびヒトES細胞研究専門委員会」では、nt ES細胞と表記して区別する。本稿でいうES細胞とは、nt ES細胞をさす。
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