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(掲載日 2009.06.02)

 ■「100年に一度」 

 昨年秋、グリーンスパン前FRB(米連邦準備理事会)議長は、今回の世界的な大不況を「100年に一度の津波」と表現した。

 当時は、いわゆる「リーマンショック(注1)」で急速に株価が下落、景気も悪化し、全く先が見えない状況だったことから、多くの市場関係者やエコノミストのみならず、政府関係者までも「100年に一度」のフレーズを多用した。

 ■「100年に一度」の威力 

 「100年に一度」は様々な場面で、従来の見方、行動や政策などの変更や転換の際に、いわば「免罪符」のように使われている。

 仮に「100年に一度」のフレーズがなかったとしたら、各国政府の対応が市場中心(小さな政府)から政府中心(大きな政府)へ、これほど容易に転換できなかったのではないか。

 しかも、政府、企業や資産運用などの責任者は、従来の行動や見通しの誤りについて、より厳しく責任を問われていたに違いない。

 ■持ち直してきた景気と株価 

 世界経済は昨年末から今年初めにかけて急激に悪化したが、悪化速度が次第に緩やかになっており、最近は僅かだが回復の兆しが出始めている。また先見性があるといわれている株価を見ても、今年の安値から30%程上昇している。

 景気や株価に回復の兆しが出てきた背景には、急激な悪化の反動という面はあるものの、各国政府の例を見ないほど大掛かりな経済・金融対策と、対策継続への期待がある。

 ■未曾有の大不況は名言で回避か 

 今回、世界恐慌時の過ちを繰り返さないために、米国をはじめとした各国政府は、「100年に一度」のフレーズを味方に、大規模な景気対策に邁進中だ。

 しかも、足りなければ更なる対策も辞さない構えを見せている。こうした政府の対応が続く限り、各国は未曾有の大不況を免れる可能性が高いのではないか。(注2)

 また、一昨年の高値から今年の安値までの株価下落率は、日本が▲60%程度、欧米が▲50%程度だ。

 安値を更新しなければ、株価動向から見た今回の不況は、株価が高値の10分の1程度になる「100年に一度」の未曾有の大不況と、株価が高値の3分の2程度になる「10年に一度」の通常の不況の中間程度に収まる、ということになるのではないか。

 とすると、「100年に一度」の名言で大不況を軽減させたグリーンスパン氏の功績は、極めて大きいということになるだろう。(注3)

(注1) 昨年9月15日、「大きすぎて潰せない」と市場が考えていた米大手証券会社の「リーマン・ブラザーズ」が破綻し、市場に衝撃が走った。
(注2) 1929年9月の米国株価暴落を機に、世界は大不況に突入した。時のフーバー米大統領は、「健全財政が景気回復に資する」として財政再建を図り、景気はますます悪化した。  また、後任のルーズベルト米大統領も、当初は「ニューディール政策」で景気を回復させたが、景気回復の兆しが見えてくると「財政再建」路線に転換したため、景気は再び悪化した。 米国株価が大恐慌前の1929年の高値を上回ったのは、26年後の1955年だった。日本の株価は、バブル崩壊前の1989年の高値(日経平均株価:38915円)を、何年で回復するのだろうか。既に20年目に入っているが、まだ9000円台である。
(注3) グリーンスパン氏は、「FRB議長時代に金融緩和を続け過ぎたため、米国で住宅バブルが発生した」と批判されている。議長時代の名声が極めて高かっただけに、こうした批判は残念だが、歴史に残る可能性が高い「100年に一度」の名言で、リカバリー出来るのではないか。

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