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コラム
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(掲載日 2008.07.15)

  「地球温暖化の進行、原油や食料価格の高騰、金融市場の緊張といった世界規模の課題が、非常に切実な形で人々の生活に影響を与えている中で開かれた」(福田康夫首相)北海道洞爺湖サミットが7月9日に閉幕した。

 翌日の主要各紙朝刊(東京本社発行版)の見出しを並べてみる。
【朝日新聞】「50年半減」国連の場へ 温室ガス 首相、主導に意欲
【読売新聞】新興国も温室ガス抑制 主要排出国 協議継続で合意
【毎日新聞】「温暖化交渉に弾み」福田首相 インフレ抑制決意
【日経新聞】「2050年半減、米も合意」首相が議長総括 ポスト京都、進展期待
【産経新聞】排出国ぶつかる国益 温室ガス 数値なき目標

 評価は相半ばしている。

 温室効果ガス削減でG8だけの数値目標設定に否定的だった米国を取り込めたという意味では評価できる。だが、中国、インドをはじめとする新興排出国を数値目標の枠組みに入れられなかった点では失敗だということなのだろう。

 議長役を務め上げた福田首相は「率直に本音の議論をする中で、ときにはお互いに激しくやり合うという場面も多々あった」という。

 だが、サミットは、首脳の個人代表(シェルパ)にはじまり、外務、財務、エネルギー、環境など各担当閣僚が議論を積み上げたうえで、最終的に意思を確認する場だ。

 大きな見解の相違は途中段階の調整で解消されるか、議題から除外されるのが通例となっている。つまり、宣言の表現をあいまいにすれば合意は簡単に成立するのだ。

 元々、誰も悪役にならない(しない)のがサミットであり、シナリオに沿って役を演じた福田首相の優等生ぶりを再確認しただけのサミットだった。首相がいくら成果を強調してみても、3割を切っている内閣支持率の抜本的な改善は望めない。

 そこで、浮上しているのが8月下旬に召集が予想される臨時国会前の内閣改造だ。

 現内閣は安倍晋三前首相の電撃退陣を受けた「居抜き内閣」であり、サミットという節目を乗り越えた福田首相が自前の内閣をつくりたいと考えるのは当然のことだ。

 女房役であるのにそりが合わない“悪妻”の町村信孝官房長官、ユニークすぎて国民がついていけない鳩山邦夫法相、誰がやっているのだかわからないほど存在感のない額賀福志郎財務相、スタンドプレーだけが目立つ舛添要一厚生労働相…。すげ替え候補はたくさんいる。

 行き詰ったときの人心一新は政治の常道でもある。

 見た目を変えることで国民に束の間の期待感を抱かせ、時間稼ぎをする。能力の有無は別として、女性閣僚を多数起用する案が取りざたされているのは、目くらましに最適だからだ。

 ところが、ことはそんなに簡単ではない。

 政府・与党内で保たれている(ように見える)均衡が崩れるからだ。大幅な閣僚入れ替えをやろうとすればするほど、そのリスクは大きい。

 すでに加藤紘一元幹事長、山崎拓元副総裁ら「おいてけぼり組」も内閣改造の匂いをかぎつけ、あの手この手で自己アピールを展開している。

 そんなことはないと思うが、福田首相が彼らの尻馬に乗ってしまうと、自民党内の主流各派から不満が噴出して、収拾がつかなくなってしまう。今以上に求心力を失えば、政権は即、崩壊の危機に瀕する。

 本来の狙いである対国民の効果も疑問だ。

 衆参両院における与野党間のねじれが解消しない限り、内閣改造をやったところで事態の根本は変わらない。

 福田政権が何をやろうとしても、政権交代に向けてなりふり構わず攻勢を仕掛けてくる小沢民主党が相手では、結局のところ何もできないからだ。

 それでも福田首相は臨時国会前の内閣改造を行うのだろうか?

 絵に描いたもちとなりかねない政策を考える前に、形だけのパフォーマンスが国民の不信につながることを心配した方がいいのではないか。

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